抗がん剤治療を受ける前に絶対考えておくべき5つのこと
1、がんが治るのかどうか、どの程度の延命が見込めるのか?
ほとんどの抗がん剤治療は延命治療であることを心得るべき!受けなくても良い。
まず、一番大事なのは、この抗がん剤治療はがんを根治(完全に治す)のために行うのか、延命のために行うのかをきちんと確認しておくことが必要です。
抗がん剤は副作用で吐く、食事が取れない、だるい、毛が抜けるなど症状に苦しめられることが多く、負担の大きい治療です。根治が望めるのであれば、ある程度の副作用も乗り越えられるかもしれませんが、延命となれば耐えられないかもしれません。しかも、延命効果も数カ月程度であることも多いのが実情です。抗がん剤治療を始める前に、がんの治る見込みを確認し、残念ながら根治が望めず延命目的であれば、見込まれる寿命とともにどれくらいの延命が期待されるのかを確認しておいたほうが良いでしょう。その上で、抗がん剤治療を受けるかどうかから考えましょう。
「○○癌で遠隔転移しています。抗がん剤治療をしましょう。」と言われると、そういうものなのかと思ってしまうかもしれませんが、受ける受けないは全くの個人の自由です。数カ月の延命のために抗がん剤で苦しむくらいなら、短くても楽しく好きなことをやりたい!と思えば、キッパリ断って最期まで診てくれる主治医を探しにいきましょう。
2、抗がん剤治療中から最後まで診療してくれる主治医を見つける。
困った時に見てもらえるかかりつけ医を作っておくと、治療中も治療後も安心!
治療の効果と副作用を納得した上で、抗がん剤治療を希望されたあなた。次に考えることはなんでしょうか?
抗がん剤治療は年々進歩しており、がんの種類によっては数年間と長期間にわたることも多くなりました。しかし、長期になれば、抗がん剤の副作用だけでなく、がんによるつらい症状も出てくるかもしれません。
そんな時、抗がん剤治療で通院している病院が必ずしも毎回対応してくれるとは限りません。特に、がんセンターなどの大病院では、多くの患者さんの治療でパンク状態。緊急の対応はしていなかったり、対応はしてくれても何時間も待つ必要があったり、場合によっては自宅から遠かったりとあまり得策ではありません。
そのため、抗がん剤治療を始める時には、自宅の近くの医療機関(できれば入院ができる病院)で主治医を見つけておくことが大切です。抗がん剤治療で食事が取れない時に外来で点滴をしてもらったり、頻繁に吐くようであれば数日入院させてもらったり、普段の体調管理をしてもらうことで抗がん剤治療もより長く有効に行うことが期待できます(必要があれば、リハビリや栄養指導も受けることをお勧めします)。
また、最終的に抗がん剤治療ができなくなれば、がん治療の病院ではそれ以降の通院はできないことも多く、最後まで診てもらえることは少ないのが現状です。ある日、抗がん剤治療ができなくなり転院してくださいと言われ、途方にくれる。そして気持ちの整理もつかないままに、見知らぬ病院に転院し、見知らぬ医者に診てもらう。そんなケースが非常に多いのです。
そこで、前述のように抗がん剤治療を行っている時から地元に主治医を見つけておけば、長く担当してもらえることで、意思の疎通も容易になり、自分の希望や意向も十分に聞いてもらうことができ、スムーズな転院が可能になります。
是非とも、がん治療の主治医の他にもう一人、地元で主治医を見つけておくことをお勧めします。
3、人生で大事にしていることは何か?
自分の人生を振り返って、目標を達成するための手段として抗がん剤治療を考える!
がんが治らないと分かった時点で、がんとは最後まで上手くお付き合いしていくことが重要です。
抗がん剤治療を始めると、いろいろな制限が出て来ますし、先々のことも考えて不安になることも多いものです。特に、これまでの生活とは一変することも多く、考えもまとまらないままに時間だけが過ぎていくこともあります。それでも、決めなければ行けないことは山ほどあります。
具体的にはどの抗がん剤を使うのか、いつまで使うのか、放射線治療を受けるのか、保険のきかない治療を受けるのかなど、決めなければいけないことがたくさんあるのですが、恐らくその場になって考えるだけではなかなか決められないのではないでしょうか。
そんな時に大事なことは、早期から一度がんから頭を話してみて、これまでのご自分の人生を振り返ってみましょう。子どもの頃のこと、両親のこと、兄弟のこと、友人のこと、嬉しかったこと嫌だったこと、普段の生活のこと、未来のこと。そんなことを考えているうちに、ご自分がどのような人間で、どのような考え方でこれまで生活して来て、何を大事にして来たのか、そしてこれからも何を大事にしていきたいのかが少しずつ見えてくるでしょう。個々の治療方法の効果や副作用などにこだわり過ぎず、ご自分の人生全体を俯瞰しながら考えておくことで、いざという時にも比較的冷静に判断ができるようになります。
抗がん剤治療は、その考えた人生を少しでも有効に実現するための手段です。抗がん剤治療にのみ固執していると、本来なら手段であるはずの抗がん剤治療が、あたかも人生の目的のようになってしまいます。「抗がん剤治療のために生きていく」ことは必ずしも有意義ではないかもしれません。そうならないためにも、早めに自分の人生を振り返って、自分は生きていく上で何を大事にしたいのか考えておきましょう。
4、抗がん剤治療をいつまで続けるのか?
抗がん剤治療は頑張らない方がいい場合もある
前述のように抗がん剤治療は、飽くまでも目標を達成するための手段なのですが、人によっては抗がん剤治療を続けること自体が目的になってしまう場合もあります。もちろん、少しでも寿命を延ばしたいと願うことは間違いではありませんし、自然ことです。しかし、抗がん剤治療も2種類目、3種類目となってくると、期待される効果はどんどん小さくなっていきますし、副作用が強くなってくるものです。そうすると、せっかく寿命が延びたところで、その延びた寿命がそのまま副作用に苦しむ期間になってしまうこともあるのです。さらには、抗がん剤治療は正常細胞も攻撃する諸刃の剣です(その結果が副作用として現れます)。無理をして続けると、逆に寿命を縮めてしまうことだってあるのです。場合によっては、抗がん剤治療の間隔を長くしてもらったり、量を少なくしてもらったりすることで、比較的穏やかに治療を続けられることもあります(もちろん、効果に関しては不確かにはなってしまいますが)。抗がん座治療にとらわれ過ぎないように、どんな形で続けるのか、どこで終わりにするのか、ある程度イメージしておくと良いでしょう。
5、最後の数週間をどこでどう過ごしたいか?
抗がん剤治療を続けているとホスピスには入れないし、穏やかな最期も迎えられない!?
あまり考えたくないことだとは思いますが、とても大切なことなのであえてお話しします。癌の完治が見込めなくなった時に、最後の数週間をどこでどう過ごしたいかをあらかじめ考えておくことは非常に重要です。なぜなら、その準備をしておかないと、直前に決めても叶えられないことが多いからです。
まずは場所です。現在、日本の緩和ケア病棟(いわゆるホスピス)の数はまだまだ少なく、入ろうと思っても順番待ちをしなければいけないことがほとんどです。そのため、急に入ろうと思っても順番を待たねばならず、順番が来ないまま亡くなってしまうことも十分に考えられるのです。これを回避するためには、早めに希望する緩和ケア病棟に紹介をしてもらって、早めに繋がりを作っておくことが重要です。また、自宅でとお考えの人も多いでしょう。自宅で最期を迎えるには再度まで看取ってくれる在宅医を見つける必要があります。これもまだまだ地域によっては不足していることも多く、既存の患者さんで手いっぱいの診療所もあるため、こちらも希望するのであれば早めに相談しておくことが得策です。
さらに、抗がん剤治療についても考える必要があります。基本的に抗がん剤治療をしている間は、ホスピスには入れませんし、在宅医療を受けることも難しいと思います。抗がん剤治療を直前までやって、ヘロヘロになってドクターストップがかかり、病院で息も絶え絶えに数日で亡くなる。何も考えずに抗がん剤治療に固執しているとそのようなことになりかねません。抗がん剤治療を行なっていても、最後の数週間は抗がん剤治療はやめて、穏やかに希望の場所で過ごす。そのための準備をし始めるのに、遅いということはないのです。
加藤 寿
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