在宅医療・介護を支える多職種について

病気を抱えた方がご自宅や施設で生活をされるためには、多くの職種が協働して関わり、在宅医療及び介護を行います。

ここでは、その各職種についてご紹介します。

医師

在宅医療の中心は医師です。

診療所にもよりますが、ほとんどの場合は主治医が定期的に訪問診療に来て、治療の方針を決定します。診察を行い必要であれば検査をして、全身の状態を評価します。お薬の処方を行うのも医師の役割です。多職種の導入際に指示書を作成するのも主治医の重要な役割となります。また、各種診断書の作成も主治医が行います。発熱など状態が変化した際に臨時の往診が必要となった場合は、いつもの主治医ではない医師が診察にくる場合もあります。また、在宅での検査や治療が難しい場合には、病院が紹介され病院で検査や入院治療を行う場合もあります。

自分の普段の状態をよく知る「かかりつけ医」を持つことで安心して自宅での生活を過ごすことができます。日本では病院が科ごとに分けられていることが一般的であるため病気ごとに違う病院にかかることも多いですが、それぞれの病気が安定していれば近くの「かかりつけ医」に紹介してもらって受診先を一本化するのもいいでしょう。

 

看護師

在宅医療においても最も身近にいて頼りになるのが看護師です。

訪問看護として毎週定期的に家に来てくれて、血圧などの測定や全身状態の評価を行ってくれます。また、医師は外来診療や他の業務がありすぐに動くことが難しいこともありますが、すぐに状態の確認が必要な場合に診
察に来てくれるのは看護師さんで、とても頼りになります。医師の指示のもと点滴や採血も行うことができます。

訪問看護を利用する場合、ステーションによって24時間の対応をしているところと、そうでないところがあります。夜間や休日でも対応してもらえた方が安心だと思うようであれば、24時間対応の訪問看護ステーションを選びましょう。また、施設に入所されている場合には、その施設に看護師さんがいる場合といない場合があります。

おしっこが出ない際に膀胱まで管を通す導尿や、痰が多い際に行う吸引、便秘の際の浣腸などは医療行為とされています。在宅の場合は、これら医療行為のうち本人や家族ができそうなことに関しては医師や看護師が指導を行い、本人や家族に行ってもらうことができます。一方で、医療行為とされていることは一般の施設職員では行うことができません。これらの医療行為が必要で、看護師さんが施設にいない場合やいても時間が限られている場合には、訪問看護を導入することがあります。

 

薬剤師

在宅医療において、医師が必要と判断し指示を出せば薬剤師が自宅や施設に薬を届けて、薬に関する説明をしてくれます。また、服薬指導として、薬の飲み方や飲む時間、管理の仕方(薬によっては冷暗所への保管が必要な場
もあります)、副作用の確認や、薬を飲み忘れなくきちんと飲むことの手助けなどを行います。残った薬を確認し医師が作成した処方箋をもとに処方日数の調整を行うことや、薬の飲み合わせを評価することも薬剤師の仕事です。薬を飲み忘れていることを主治医に言いづらい場合、担当薬剤師に相談されてください。

 

歯科医師

歯科医師も自宅や施設に訪問し治療を行ってくれます。

一般に歯科というと虫歯や歯周病の治療をイメージされると思います。もちろん、訪問歯科でも虫歯や歯周病の治療を行ってもらえますが、これだけが訪問歯科医の仕事ではありません。年をとると、ものを飲み込む力(嚥下能力と言います)が弱まります。この嚥下能力を評価し、必要であればリハビリの指導を行うことも訪問歯科医の重要な仕事です。また、口の中をきれいに保つための口腔ケアの指導を行ってくれます。歯科医師の指導のもと、歯科衛生士が訪問し、嚥下リハビリや口腔ケアを行ってくれることもあります。肺炎は死亡原因の第3位となりました。嚥下機能をきちんと評価し口腔ケアを行うことで防ぐことができる肺炎が多いのも事実です。また、高齢の方は入れ歯(義歯)を使用している場合も多いでしょうが、この義歯の作成や調整、抜歯も可能です。また、訪問歯科でレントゲンの撮影も行うことができます。虫歯や歯周病だけでなく、訪問歯科に積極的にお世話になりましょう。

 

リハビリ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)

リハビリと聞くとトレーニングのようなものをイメージし、自宅でなんか無理だよと思われる方も多いと思いますが、目的に応じて実に様々なものがあります。

  • 足腰が弱ったしまったために筋力を取り戻すためのリハビリ
  • 今残っている機能をできるだけうまく使うためのリハビリ
  • 癌などの痛みがないように動くためのリハビリ
  • 固まってしまった関節を伸ばすためのリハビリ
  • 口から食べ物をむせずに食べるためのリハビリ
  • 褥瘡ができないような体勢をとるためのリハビリ
  • むくんだ足を少しでもよくするリハビリ    など

訪問リハビリを使うことによって、より快適な自宅療養ができる可能性があります。是非、担当ケアマネに相談してみてください。

栄養士

栄養士さんも自宅に訪問してくれます。自宅に来てもらう一番のメリットは、実際の自宅の環境で作れる食事を教えてもらえることです。また、いわゆるカロリー制限や塩分制限と言われる糖尿病や心臓病・腎臓病の食事指導だけでなく、体力が弱った時でもむせにくい食事の作り方や、癌で味覚が変化した時にでも食べやすい食事などを教えてくれます。

食べるということは、生きる上で非常に大きな楽しみの一つです。できるだけ最後まで、口から食べることを支えてくれる栄養士。食事のことでお困りであれば、是非ともご利用ください。

 

介護支援専門員(ケアマネジャー)

ケアマネジャーは介護の分野での主治医です。

介護保険の申請をして介護認定が行われ要介護となったら、ケアマネジャーを選ぶことになります。ケアマネジャーを決めたら、このケアマネジャーとともにケアプランを決めていきます。自分が自宅でどのよう過ごしたいか、家族の負担をいかに減らすか、このケアプランによってずいぶん生活が変わってきます。ケアマネジャーを選ぶ際は慎重に考えましょう。大きい病院と関連のある事業所にいるケアマネジャーに安心感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、その病院に関連する介護サービスばかりを勧められてしまう可能性もあります。

一度立てたケアプランに関しても、実際に運用してみてどうかについて、その後の定期的な訪問でケアマネジャーがフォローしてくれます。自宅で生活してみて困ったことがあればまずはケアマネジャーに相談してみましょう。介護用具のレンタルや、新たなサービスの導入などで対応してくれるでしょう。

 

訪問介護(ヘルパー)

在宅療養で生活を一番近くで支えてくれる存在です。大きく分けて身体介護と生活援助の2種類のサービスがあります。

身体介護サービス…トイレ・食事・更衣・入浴介助、おむつ交換など

生活援助サービス…洗濯、掃除、調理、買い物、シーツ交換など

 

訪問入浴

自宅に浴槽が来て、お風呂に入ることができます。筋力が落ちてくると、なかなか湯船に浸かるということが難しくなって来ます。最初は他人にお風呂に入れてもらうということに抵抗がある方も多いのですが、実際に訪問入浴を始めると、湯船に入れるという幸せに誰しもが笑顔になることを経験します。是非とも、お勧めしたいサービスです。

 

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内田 直樹

院長(精神科医)たろうクリニック
福岡大学病院精神神経科医局長、外来医長を経て2015年4月より現職。認知症の診断や対応、介護家族のケアなど在宅医療において精神科医が果たす役割が大きいことを実感。また、多くの看取りを経験する中で、人生の最終段階について事前に話し合う重要性を感じている。

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