在宅医療を担う新しい専門医「総合診療医」ってなんだろう?
総合診療医は新しい専門医
皆さんは「総合診療医」という言葉をお聴きになったことがあるでしょうか?「総合診療医」は「総合診療科」を専門とする医師のことで、「家庭医」とか「かかりつけ医」とか「プライマリケア医」と呼ばれたりします。最近、少しずつメジャーになって来ているので、どれか一つくらいは聞いたことがある人もいるかもしれませんが、まだまだ一般的には広がっていない概念だと思います。なぜなら、「総合診療医」とは「内科医」「小児科医」「耳鼻科医」などと同じ専門医なのですが、その専門分野である「総合診療科」は日本では、つい最近認められた新しい分野なのです。
総合診療医の特徴
総合診療医の特徴は、以下であると説明されます。
1、近接性:一番近い存在で、親身になって、患者さんを一人の人として診療します。
2、継続性:病気の治療だけでなく、病気予防から終末期まで、継続的に診療を担当します。
3、包括性:どんな症状にも、どんな病気でも、何歳でも診察し、必要があれば専門医へ紹介します。
4、協調性:看護師やケアマネジャーなど、医師以外の医療介護スタッフと連携します。
5、文脈性:患者さんの考え・価値観などを重視し、その人生や家族背景なども考慮して診療を行います。
ちなみに総合診療というと「ド●ターG」という某番組を思い浮かべるかもしれませんが、あの番組は総合診療医の一端である、「臨床診断」を示しているだけに過ぎず、どちらかというと「総合内科」のイメージが強いです。「総合診療科」が扱う病気は「内科」と重なるものが多いため、この二つはよく混合されてしまいますが、「内科」は病気の診断や治療に重きを置いているのに対して、「総合診療医」は病気そのものというよりは、病気に対する患者さんの人生や想いに重きを置いて専門的に診療しているという点で大きく異なります。
在宅診療と総合診療医
在宅医療では病気を治すというよりは、病気と上手くお付き合いしながら自宅で過ごすことが目標となることがほとんどです。つまり、「治療」よりも「生活」をどうするかを考える必要があるのです。そのためには、病気を完全には治せないながらも症状をうまくコントロールしたり、生活のためのサポートを考えたりということが、より重要となるので、病気を治す専門家医師では十分な在宅診療が受けられないこともあります(もちろん、他の専門医でも在宅医療を十分に熟知している医師はいます)。
病気や老いを持ちながら自宅で過ごすということは、患者さんやご家族の想いが重要になります。場合によっては、病気の辛い現実に向き合いながらの生活になることもあります。
そんな時、一番近くで、ずっと継続的に、どんな症状にも、他の職種と連携しながら、そして患者さんとご家族の想いを大切にしながら診療ができる「総合診療医」はまさに在宅医療にうってつけの専門医なのです。
しかし、総合診療科は新しい専門分野なので、専門医の数は581人(2016年10月31日現在)とまだまだ非常に少ないのが現状です。今後は、どんどんと総合診療医が増えていくことが予想されますが、それには一般の方々の認知や理解も必要です。現在は「総合診療医」を選ぶということができる地域はなかなかありませんが、総合診療医、すなわち「かかりつけ医」の専門性をご理解いただき、今後、外来受診や在宅医療の際には選択の一つとしてお考えいただきますよう、お願いいたします。
参考HP:プライマリケア連合学会(www.primary-care.or.jp/)
加藤 寿
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私は看護師ですが、在宅医療としての看護師の仕事はどんな事をすのでしょうか。
気になっているのですが。
看護師としては、大きく分けて、訪問看護師として関わる場合とクリニックの看護師として関わる場合の2つが考えられると思います。
訪問看護師としては、単独で患者宅に訪問し看護を提供します。医療と介護の両方を担い、医師とケアマネや介護士のつなぎ役としての役割があります。
クリニックの看護師としては、医師が訪問する際に同行して診療補助をしたり、患者やケアマネからの要望に合わせて各部署の連絡・調整を担ったりします。
いずれにせよ、在宅医療において、場合によっては医師よりも中心的な役割を担うと言ってもよい、重要な職種だと思います。