在宅医療を始めるには、患者さんと家族の「家に帰って過ごしたい」「家にいてほしい」という思いが大切です。
在宅医療の相談先
<病院に通院している場合>
- 主治医に相談
- 介護サービスを使っている場合は、ケアマネジャー
- 自治体の窓口(地域包括支援センターなど)
<入院している場合>
- 病院の医療連携室、医療相談室
- 主治医に相談
(1)在宅医療を始める前に
まずは主治医や看護師さんや介護スタッフに相談してみましょう!
在宅医療を始めるきっかけは、多くの場合、病院や診療所の先生や看護師さんや医療連携スタッフ、あるいは介護サービスを受けてらっしゃる方は、ケアマネジャーさん、施設の介護士さんなどの働きかけです。もし、あなたが、家族(患者さん)に在宅医療を受けてほしいと望んでいるなら、勇気を出して、主治医や看護師さんや介護スタッフに相談してみましょう。あなたの近くに手を貸してくれる人が必ずいるはずです。
また、在宅医療を始めるに際して大切なことがあります。それは、患者さん本人と家族の「家に帰って過ごしたい」「家にいてほしい」という思いです。この思いがあれば、遠慮は要りません。一歩、前に足を踏み出しましょう。
(2)在宅医療が始める時に相談する人
1, 通院から在宅医療
あなたの家族(患者さん)が、先月までは定期的に病院や診療所などの医療機関に通院していたが、脳梗塞になったり、認知症の病状が進んで、自分一人では医療機関に通うことはできなくなった。あなたが付きそうにしても、平日に休みが取れない。
困ったなあ〜。
そんな時は、介護サービスを利用している患者さんは、まずケアマネジャーさんに相談しましょう。ケアマネジャーは介護支援専門員と言って介護が必要な人のために、どういった介護サービスが必要なのか、一人一人の状態に合わせた介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、介護サービスの調整、管理を行う専門職です。大抵のケアマネジャーさんは、近くで在宅医療を行っている医療機関をいくつか知っています。
主治医の先生に聞いてもいいでしょう。かかりつけの先生なら、患者さんと病気の状態を良く理解しています。かかりつけの先生が訪問診療ができるなら、その先生に自宅まで来てもらいましょう。在宅医療を提供している医療機関は主に「在宅支援診療所」で、24時間365日緊急時にも対応してもらえます。もし、あなたの家族が通院している医療機関が大学病院などの大病院なら、自宅まで訪問診療をしてもらうことは難しいでしょう。そんな時には病院の中に「医療連携室」などの相談窓口ありますので、遠慮なく相談してみてください。
主治医の先生は、忙しそうで相談しにくい、あるいはケアマネジャーさんに相談したけど、在宅医療を行っている医療機関を知らない。そんな場合もあるでしょう。その時は、区市町村のある「地域包括支援センター」に相談しましょう。地域包括支援センターは全国の区市町村にあり、在宅医やケアマネジャーを紹介してくれます。
2, 入院から在宅医療
- 認知症が進行して動き回っているうちに、自宅で転倒し足の骨を折って入院した。
- 脳梗塞で入院。一命は取り留めたものの半身まひの後遺症が残ってしまった。
- 心不全で入院し、治療はうまくいったが、筋力が低下して歩けなくなった。
- 肺炎だと思って入院したら、肺がんが見つかった。しかも治療法がなく、末期だと言われた。
このように退院後に今までと同じように、病院に通院することは困難な場合は在宅医療を考えてみましょう。
患者さんが入院している場合は、まずは主治医の先生と良くお話しすることをお勧めします。患者さんの今の病状を一番理解しているはずです。実際には、病院には医療連携室とか医療相談室という部門があって、ソーシャルワーカーと呼ばれるスタッフが、あなたの自宅の在宅医との連絡を取るなどの実務を行ってくれます。
(3)在宅医療が始まるまでの流れ
かかりつけ医が診療情報提供書を作成
1. 在宅医療(訪問診療)を利用することについてかかりつけ医の同意を得る。
在宅医療に切り替えるには、在宅医が、これまでの治療経過を把握することが必要です。かかりつけの先生は、患者さんの現在の病状やお薬、これまでの治療経過などの診療内容を書いた「診療情報提供書」(紹介状)を作成してくれます。もし、かかりつけ医がいない場合は、これまでかかった病気に関するメモや健康診断、お薬手帳のコピーを準備しましょう。
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在宅医が決定
2. 在宅医に連絡し、受け入れ可能かどうかを問い合わせる。
多くの場合は、ケアマネジャーさんや医療連携室のスタッフが在宅医と連絡を取ってくれます。在宅医は前述の「診療情報提供書」をみて、受け入れが可能かどうか判断します。
しかし、在宅医が患者さんの在宅医療の受け入れを断ることもあります。その理由は、すでに多数の在宅患者さんを受け入れていて、これ以上の患者さんに十分に対応できない場合、小児在宅やがんの在宅看取り、ALSなどの神経難病で人工呼吸器の管理や胃瘻で栄養管理を行っているなど専門性が高く対応できない場合などです。
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事前訪問
3. 在宅スタッフに事前に自宅や病院に訪問してもらう。
緊急性のある場合を除いて、訪問診療を開始する前に、クリニックからソーシャルワーカーや在宅医、看護師が患者さんのお宅や入院している病院を訪問して、診療開始の準備を行うことがあります。これを事前訪問と言います。また、クリニックによっては、あなたや(受診可能なら)ご本人に一度クリニックを受診していただき相談したいと言われることがあります。これから、あなたの家族に付き添ってくれる在宅の先生と初対面です。この時、クリニックから急変時の対応をどうするのか、がん終末期の方針など聞かれることがあります。どうするかが決まっていなければ、決まっているいないを含めて、しっかり話し合いをしましょう。
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訪問診療開始の日程決定
4. 訪問診療開始
事前の打ち合わせで、訪問診療を始める日程が決まります。介護保険を利用している患者さんの場合は、ケアプランに応じて日程が設定されます。
(4)介護保険制度を利用しましょう。
在宅医療を始める患者さんの多くは、医療だけでなく食事や排泄などの生活援助や身体介護が必要です。介護保険では、これらに加え、日帰りで食事、入浴、機能訓練を行ってくれるデイサービス(通所介護)、施設の短期間泊まるショートステイ(短期入所生活介護)、理学療法士や作業療法士が自宅まできてくれる訪問リハビリテーション、自宅で入浴させてくれる訪問入浴など様々なサービスを受けることができます。介護保険制度を上手く利用することで家族の負担を軽くすることができます。
いま、介護サービスを利用しているならケアマネジャーがケアプランを作成してくれます。患者さんが、自宅で生活をしていくのにどんなサービスを受けるのが最もいいか相談しましょう。もし、介護保険を利用していないなら、至急に介護保険サービスが受けれるように介護保険申請をしましょう。新しく介護保険申請をする時の窓口は地域包括支援センターで相談をすれば保険制度の仕組みや利用の仕方を教えてくれます。もし、患者さんが入院中なら退院までに、車椅子やベッドなどの福祉用具が必要になるかもしれません。早めにケアマネジャーに相談したほうがいいでしょう。
<介護保険制度でできること>
1, 居宅サービス(訪問サービスの詳細はこちら)
- 訪問介護(ヘルパー):身体介護や生活支援
- 訪問入浴介護:浴槽を自宅まで運んで入浴させてくれる
- 訪問看護:医師の指示に元づいて定期的に訪問して病状の把握などをする
- 訪問リハビリテーション:自宅でのリハビリテーション
- デイサービス(通所介護):施設で食事や入浴、機能訓練を日帰りで行う
- デイケア(通所リハビリテーション):デイサービスに加えて理学療法士によるリハビリ
- ショートステイ(短期入所生活介護):施設に短期間(30日以内)泊まって、食事や入浴、機能訓練を行う
- 福祉用具貸与:車椅子やベッドなどのレンタル
2, 特定福祉用具の貸与
- 入浴や排泄に関する用具のレンタル
3, 住宅改修
- 手すりなどの住宅改修費用の負担
(5)在宅医療を始めるにあたって確認しておくこと
在宅医療を始めるにあたって、事前に確認しておくことがあります。
どれも大切なことですから、クリニックとの事前相談の時に必ず確認しましょう。
①在宅クリニックの診療体制
在宅医療を行うクリニックの多くは在宅療養支援診療所です。在宅療養支援診療所は24時間365日の体制で対応することが基本です。しかし、医師の数が少なく実際には緊急の対応が難しい医療機関もあるようです。また、在宅医療では、基本的に医療面の全般をお任せすることになります。その医療機関に何科の先生が所属しているのかを確認し、自分の抱えている病気をきちんと治療してもらえるかを確認しましょう。
②緊急時の連絡方法と対応体制
緊急時にどの電話番号に連絡したらいいのか確認しましょう。確認ができたら、メモして、すぐにわかるところに貼っておきましょう。
③連携病院
在宅支援診療所には、入院が必要になった場合に受け入れてもらえる連携病院があります。それとは別に、緊急時に入院を希望する病院や行きたくない病院があれば事前に決めておきましょう。